最高裁判所第一小法廷 昭和29年(レ)59号 決定 1954年11月17日
抗告人 少年K附添人 牟田真
主文
本件抗告を棄却する。
理由
少年K附添人牟田真の抗告趣意は、違憲をいうけれどもその実質は、原決定が右少年につき福岡家庭裁判所のなした少年院送致の保護処分の決定を相当と認めるに当つて、その判断の資料とした家庭の事情に関する事実に誤認があることを主張するに外ならないものであつて、少年法三五条の特別抗告理由に当らない。
よつて当裁判所は、同法三三条により、裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 真野毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)
別紙
(特別) 抗告申立書
本籍 長崎県〇〇郡〇〇町大字〇〇〇〇番地第一
住居 福岡市〇〇町〇番地
無職 少年K
原、抗告人親権者父 H
弁護士
本件抗告人 右少年附添人 牟田真
右少年に対する虞犯、窃盗保護事件につき福岡高等裁が昭和二十九年九月十七日為した決定主文本件抗告を棄却する、この決定は不服であり憲法に違反するところがあると思ひますので附添人は最高裁判所に対し特に抗告を呈します。原決定は破棄、取消となるべきものと思為するのであります。
原決定のその理由中「本件抗告の要旨」として記述しあることは殆んど原抗告人の述べたところを間違ひなく記述しあります。又、原審が記録精査の上認定されたところも附添人は大部分誤りなしと思為して居ります。
而し重大なる誤認があります。これは家庭裁判所の調査不詮鑒に起因するのであると相考へます。原抗告人H方家庭の現況を説述するに当り
又抗告人は現在の後妻との関係においてその他家庭の雰囲気において何等の不安もなく少年を受け容れて情操教育を施すことが出来るであろうか、現在夫婦間の愛情においてしつくりゆかないところがありしかも当少年に対する育愛の覗われる抗告人に対し少年の適切なる補導を期待することは遺憾ながら望み得ない
とあるのはこれは事実の甚しき誤認である、この資料は何等権威ある資料ではあるまい原抗告人H夫妻は何等しつくりしないところや水くさいところはなく尋常な夫婦であり御互に敬愛し合つて居り、夫婦語らつてK少年を迎入れ温き心を以て天空海闊にひねくれず、我まゝに流れることなき様寛厳艮しく補導することに一致して居ります、K少年を漸次優良の方へ進ましむべく努力することに御互間深き諒解が成立つて居ります、この事実を無視し和合せる夫婦間を肆意專断により不折合で補導するに不適当なりとする誤れる資料を誤つて取上げ以て家庭裁判所の決定を取消す要なしとなされた福岡高等裁判所の決定は憲法に反するものと思料します。
憲法第十二条憲法が国民に保障する自由及権利は保障されないこととなり又憲法第十三条の自由、幸福追求に対する権利は尊重されないことになると思料します。
因て原決定は破棄、取消さるべきものと思料します。
昭和二九年十月二十日
右少年附添人弁護士
牟田真
最高裁判所御中